吸血鬼の手帖

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† ウェディング・ドレスに紅いバラ

作者:田中芳樹
イラスト:小林立
発売:集英社 スーパーダッシュ文庫
初版:2007年06月30日
価格:522
頁数:253
「深紅の薔薇結社」略称はCRS。先天性の吸血鬼が自らの生存権を守るために作られた秘密組織である。
 その新米結社員・花村雅香とその「コーチ」緑川淳司が、頻発する怪事件の調査に乗り出す! 女子大生連続怪死事件、病院から次々と消える患者たち、一家殺害事件と殺人ネズミの暴走。事件の影に潜むのは吸血鬼…!?
 人類の平和を守って、吸血鬼の平穏を守ります! 吸血鬼アクション!!
 一番のインパクトあったのは吸血鬼ではなく鼠。
 吸血鬼モノに鼠の大群は付き物だってわかっているけどギャース!!
 渋谷駅のハチ公周辺行くと、実際に結構な量の鼠が走り回ってるからね。ううっ。

 久々に読む田中芳樹作品。
 田中芳樹の文章ってこんなにクセ強かったっけ? ここまで上から目線の中二病だったっけ? あれぇぇぇ?
 いっそ忌憚無く述べてしまえば、こんなに気持ち悪い文章だったっけ?
 最近書かれた作品ではない(雑誌掲載は1987年、徳間ノベルスから出たのは1989年)ので、やはり読む側の自分が変わったとしか考えられないのですが、人間の感性ってそんなに極端に変化するものではない気も。なのに何故。
 何でだろう、とにかく読んでて引っかかる引っかかる。
 喉に刺さった小骨か指先に刺さった棘みたい。
 ……物事を斜めに見る俺格好良いオーラのわざとらしい演出?

 田中芳樹って、こう、物事をド派手に描写するのが好きだよね。現代日本が舞台だと、大抵都庁崩壊とか首都東京大混乱描写があるようなイメージ。
 それでいてそれを引き起こしている本人たちに、大事をやらかしている自覚が無いorそのくらい大したことではないと思っている節があって。
 大事の前の小事、という考え方自体は否定できませんが、それって突き詰めれば「敵」側の思考と同じじゃない?
 それが普通であると設定されているファンタジー作品じゃあるまいし(吸血鬼出ている時点でファンタジーだろ? というのはこの際黙殺)、いや、むしろファンタジー世界でも主人公なら主人公らしく葛藤して欲しいところなのに、現代日本を舞台にそれをされると幻滅まではしないけど、「あれ?」って思ってしまう。
 主人公の「正義」に騙されている気がしてくるんですよ。一見、間違った事を言っていないだけに。
 日本は日本でも戦国動乱の世が舞台ならもうちょっと素直に読めるかもしれないけど。

 こんなこと考えながら田中芳樹作品読むなんて、歳取ったのかな……。
 若い頃には見えなかった、作者の作為に気付いちゃったのかしら……。

 決して「面白くない」わけではないのです。
 完膚なきまでにつまらなかったら、気持ち良く貶せるのに。

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