吸血鬼の手帖

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† 屍鬼4

作者:小野不由美
発売:新潮社 新潮文庫
初版:2002年03月01日
価格:743
頁数:574
 前代未聞の怪異が村に跋扈する中、閑散とした病院の奥で、連夜密かに地獄絵巻が繰り広げられていた。
 暗紅色の液体が入った試験管の向こうに、愛しい骸の変化を克明に記録する青ざめた顔。ゆっくり振り翳された杭……。
 はびこる「屍鬼」を壊滅させるための糸口が見え出した。しかし、その時、村人の絆が崩れ始める。生き残った者たちが選んだ策は――。
 思わず目を覆う展開、衝撃の第四弾。
 屍鬼側の頭脳プレイっぷりが見事な4冊目。
 屍鬼の掌の上で弄ばれ、集団心理を逆手に取られ、修復しようのないところまで分断されてゆく村。
 このまま進んだら全てが屍鬼の思うがままになるのでは? と読んでいる方まで不安になるくらいの連携っぷりと、張り巡らされた罠。

 対する村人は、無意識に夜出歩くことを恐れながらも、そこから先には決して踏み出せない。
 やっとの思いで敏夫が導き出した「解」をも拒む。
 何故なら、その「解」を受け入れてしまったら、自分を取り囲む非日常を認めなくてはいけなくなるから。
 変わらず平穏に生きていたい、家族が死んだのは自分の落ち度のせいではない、起き上がりなどいるわけがない、そんなことはあってはならない。
 だから、間違っているのは敏夫の方でなくてはならない。
 それでも夜が怖い。
 そんな自己中心的な村人の言動は、読んでいるとちょっとイラッとくるかもしれません。敏夫の「それがあんたらの答えか?」という台詞は、読者の代弁にも聞こえます。

 そんな苛々を味わえるこの巻で、唯一スカッとする……と言うとちょっと語弊がある気がしますが、何か見所がありそうだと思わせてくれるのは、酒屋の大川富雄。
 
 鬼かもしれない、起き上がりかもしれない。そのどちらにせよ、それ以外のものにせよ、大川にとっては大差なかった。肝要なのは、敵がいる、ということだ。
 村の秩序と村人の安全を脅かす敵がいる。それさえ理解できれば、大川にとっては十分だった。

 よし、頑張れ大川! やる気がありそうな村人は君だけだ!
 って、一瞬応援したくなるあたり、うまい演出だと思います。

 でも、大川を応援するってことは、「屍鬼を殺せ!」と叫ぶことに他なりません。
 そしてこの作品で描かれている屍鬼(吸血鬼)は、あくまでも「人間」と同列なんですよね。
 そこには人間としての意識がある。
 それを目の前にしてなお「殺せ!」と叫べるのか? それは殺人とは違うのか?

 屍鬼と村人と、どちら側に感情移入するのか? どちら側に感情移入させようとしているのか?
 これが『呪われた町』なら、間違いなく人間側だと答えられます。
 でも『屍鬼』では、私にも即答ができません。

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